着物をまとった女性を描いているとき、伝統的なものと現代的なものとの結びつきは、たえず、漠然とつきまといます。着物の柄は、四季折々の図柄が整然と配置されていて抑制された要素を含みつつ、独特の配色で日本らしさが宿っています。それを着る女性は、日本らしさとともに、「華やかさ」をまといます。
 着物というモチーフは「昔の人を描いているのかな」と思われがちですが、そうはしたくなくて、女性が着る自然なコスチュームとして、時代性や設定にあまり囚われずに見てもらいたいと思っています。
 着物への興味は幼少期からでした。姉が日本舞踊を習っていて、物心ついた頃から楽屋に出入り出来たのは経験として大きかったと思います。楽屋では支度をした演者さんたちが盛んに行き来をしており、いつもそれを、ぼーっと見ていました。
 そこには異世界みたいなイメージがあったのです。

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【寄稿者】
大竹彩奈(おおたけ・あやな)
埼玉県浦和市(現・さいたま市浦和区)生まれ。東京藝術大学卒業後、同大学大学院へ。卒業後も助手として働き続ける傍ら、各地のギャラリーで個展を開催。2015年、独立。個展を開きつつ、数多くの装画を手がけている。